top of page
検索

日常に息づく合気道の教え ①

  • 執筆者の写真: Aiki Hamakaze
    Aiki Hamakaze
  • 11月30日
  • 読了時間: 3分

最初はほんの出来心でした。いつのまにか気づいたらもうやめられなくなっていました。私は盗んだバイクで走り出したかっただけなのです。行く先もわからぬまま。

しかしそのためには大きな壁が一つ立ちはだかっていました。私はバイクの免許を持っていませんでした。そして私はバイクの免許を取る決意を固めました。行く先もわからぬまま盗んだバイクで走り出すために。


調べると最寄りの駅から自動車学校までの送迎バスが出ていることが分かりました。盗んだバイクで走り出すためにまずは自動車学校の用意してくれた通学用の送迎バスで走り出します。

バスの中、周りは未来を見据えた明るい輝きを瞳に灯した若者ばかりでした。そんな中、人知れず、盗んだバイクで走り出す薄暗い未来を思うおっさんはまるで自分がテロリストにでもなったかのような気分でした。世間に対する罪悪感に包まれました。いつも稽古で教えてもらっている呼吸だ、簡単なことだろう?吸って吐く、それだけだと自分に言い聞かせ平静を装いました。


入校手続きを進める中でなぜバイクの免許を取ろうと思ったのか?と問われました。本当の目的を隠すためのカバーストーリーは完璧です。家で何度も練習してきた通りに車はほとんど乗っていなかったこと。あまりに無駄なので売ってしまったこと。それでも自分自身でどうにでも出来る移動手段は確保しておきたかったためバイクを選んだことを伝えました。

スラスラと嘘を答える自分に驚きました。誰にも言えない薄汚い目的を隠し簡単に嘘をつける人間に私はいとも簡単になっていたのです。それに気付いた瞬間にもう後戻りできないところまで来てしまったのだと思いました。


夜の校舎窓ガラス壊してまわった 逆らい続けあがき続けた早く自由になりたかった
夜の校舎窓ガラス壊してまわった 逆らい続けあがき続けた早く自由になりたかった

私は教習用のバイクの前に立たされていました。まずはまたがってみろと教官の冷ややかな声がしました。二輪の乗り物は自転車以外乗ったことのない私はおずおずとバイクに近づき右足を上げました。その瞬間バイクを蹴り倒されました。おっさんテロリストに対する世間の風は想像以上に冷たかったようです。周りからはおっさんがバイクの免許取ろうって何考えてんだ、ほぅらほぅら早く起こさないと教官に怒られるぞと囃し立てる声がします。

落ち着け、自分の力を最大限に発揮できる位置があるはずだ、いつも稽古で教えてもらっていることだ、力任せにじゃない、筋肉に頼るな、軸を意識しろと自分に言い聞かせバイクを起こしました。そうして今度は逆側へと蹴り倒されました。バイクと共に蹴り倒されたおっさんテロリストに今できることはそれほど多くありません。水たまりの泥水に顔をつけたまま私は、ふるさとではそろそろ雪虫が飛び始めた頃だろうかと埒もないことを考えていました。(Yas)


続く

 
 
 

コメント


bottom of page