その杖による攻撃を捌いたり、相手の杖を奪ってしまう型(杖取り)や、こちらの杖に手をかけられた際の対処などを稽古するのが杖の稽古です。徒手の技とは全く間合いも違い、受けとの繋がりも杖を介しているため、より精度の高い見切りや身体操作が求められます。何よりも、例えばゴツいセルビア人に正面でこの長い棒を構えられるだけでガクブルです。平常心、平常心・・。また、「13の杖」や「31の杖」といった操法の型や、それらを仕太刀・受け太刀で行う「合わせ」の稽古などもあります。合気道でどの程度杖の稽古をするかは、その系統や指導者によって様々です。経験豊富な指導者が多いこの道場では、杖もしっかり稽古できるのです!
蛇足ですが、木刀(木剣)という武器はありません。木刀は、あくまで真剣で稽古するのが危険な際の代用品です。もちろん木刀でも打てば骨は砕けるので、古来より木刀での勝負は真剣でのそれと同義とされており、一定の殺傷力はあります。
それに対して杖は、そのまま杖という武器です。鋼を鍛えた刀剣に比べると心もとなく思えますが、意外にもまともに受けない限り刀で両断することは難しいそうです。古流の杖術は、剣術に対抗するために発展したのだとか。剣には剣で、杖に対抗するためには無理に踏み込まず、杖そのものを少しずつ傷つけてささくれ立たせ、杖使いの手の内を滑らなくさせるというコスイ口伝もあったようです。それほど、剣術家にとっても杖はただの棒きれではなかったということでしょう。
短刀取りの稽古もそうですが、合気道における武器の稽古というのは、武器への対処法を学ぶのではなく、あくまで「徒手の技の精度を高めるための鍛錬」ぐらいに思っておく方がいいかもしれません。少なくとも、実際に武器を持って敵対してくる輩を素手で制圧できると思わない方が賢明でしょう。合気道の杖取りの稽古では、受けの攻撃方法は水月(鳩尾:みぞおち)への突きのみですが、私が本気で杖を使うなら、そんな上品な攻撃ではなく脛を引っぱたきます。柔らかい急所を斬るのが剣、固いところを叩くのが杖のセオリーです。武器の稽古もあくまで合気道の稽古であって、杖術の稽古ではないのです。
ともあれ、杖の稽古は面白いです。非日常というやつですかね。ちなみに杖や木剣は木であるがゆえに、個体差はありますが乾燥によって歪んできます。それを防ごうとして楽器用のレモンオイルなどを塗り込んでいると、手の内がぜんっぜん滑らないテッカテカのクソ杖になってしまいますのでお気を付けください。(Z)
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